きみとぼくと、世界と【短編】
「…そういえば」
それまで相槌をいれていただけのぼくはふと口を開く。
内容はこの世界の静まった雰囲気にふさわしくないもの。
「あいつが子供産んだとき、最初は猫から猫出てきてるって思っちゃって笑えた」
母は呆れたようにぼくを見て、父は顔をしかめながら煙草を灰皿に押し付けた。
姉にいたってはぼくを鋭くにらみつける。
「でも。途中からそれがめちゃくちゃすごいことだって気づいて、」
人間より遥かに小さな体でいながら5匹もの生命を産み落としたきみ。
産まれたばかりの我が子を小さな舌で一生懸命舐めていたときの顔は母親そのものだった。