水のない水槽
「優しくされるから…余計に辛い…」


なんでだろう? 言葉が止まらない。


「絶対、お姉ちゃんが好きなのに…妹だから優しくされてるのに……」


さっきまで我慢できてた涙が、我慢できなくなっていた。


「……こんな優しさなんて…いらな」


ガチャッ。


「ごめん、おまたせ」

「彼氏~、もっとちゃんと見てやんなよ?」

「え?」

「あ~お節介かな?」

「木下、なんで泣いてんの!?」


先輩の手がわたしの頬に触れた。


ドクンッ――。


心臓が跳ね上がる。


「気持ち悪くなった?」


先輩があまりに側に寄ってくるから。


胸が苦しくてたまらないから。


その肩にしがみつきたくなる。


「大丈夫です」


でも口をついてでたのは、いつもと変わらない後輩としての言葉。

今日のわたしは、やっぱり少し、変かもしれない。
< 30 / 51 >

この作品をシェア

pagetop