ヒールの折れたシンデレラ
高速道路を行きとは反対方向に車を走らせる。

車内では今日食べたチーズの話や、宗治と勇矢の小さい頃の話など他愛のない話をしながら

途中高速の出口をおりて海岸線を走る。

夕焼けが海をオレンジ色に染めてキラキラと輝いていた。少し窓をあけて潮の香を楽しむ。

宗治に連れてこられた海辺にあるレストランでは大きなロブスターと地元の海で取れたシーフードを食べることができる。

窓際の席に座ると、夜の闇につつまれた海には船の明かりが行き来している。都会の夜景とは違うきらめきにみとれてしまう。

視線を宗治に向けると、肘をついたまま千鶴のほうを見ていた。

目が合って恥ずかしくなってうつむく。

「たまにはこういうゆっくりした時間も悪くないな」

そう言って、ペリエを一口飲みながら千鶴に話しかける。

テーブルに置かれたキャンドルで宗治のきれいな顔に影ができている。

運ばれてきたロブスターと地元で採れたというハマチに舌鼓をうつ。

「んーおいしい。このオリーブオイルもおいしいです」

千鶴の頬がゆるむ。

「うまいか?前にロブスターは食ったことあったんだけど、魚も結構いけるな」

二人で感想をいいながら食べる食事は楽しく、千鶴はデザートのチェリーパイを宗治の分までおなかに入れる。

「あとから返してなんて言われてもダメですからね」

「言わない、言わない。しっかり食べて」

エスプレッソを飲みながら宗治はその様子をみて苦笑している。

「またついてる」

宗治は自分の口元を指でさしながらニコニコと笑う。

千鶴は手で口をぬぐう。

いつも宗治にはこういう子供っぽいところをみられてしまう。

恥ずかしそうにしている千鶴を宗治は目を細めてみていた。

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