ヒールの折れたシンデレラ
タクシー乗り場まで二人で歩く。宗治の移動手段は車が多いが千鶴と二人でいるときはこうやって歩くことも多かった。

二人で過ごす時間を大切にしてくれているようで千鶴は宗治とゆっくりと過ごすこの時間が好きだった。

秋に差し掛かった夜の空気が少し肌寒い。宗治とつないでいる手とアルコールで上気した頬だけがほかほかとあたたかかった。

「千鶴この後どうする?もう少し一緒にいられる?」

頭上から甘い笑顔で言われる。

ただ食事をする短い時間の間でも、千鶴は自分の感情の浮き沈みの激しさを持て余していた。

「今日は帰ろうかな……。今週忙しかったからゆっくりしたい」

本当は一緒にいたい……。

だけどちゃんと感情のコントロールができる自信がなかった。

「僕の優秀な秘書は大事な予定を忘れているみたいだ。明日の午後から俺出張なんだけどわかってる?」

千鶴もそれはわかっている。その間宗治に会えないことも。

「……うん」

「それでもってこと?それってさっきからときどき上の空になるのと関係あるの?」

図星を疲れてドキリとする。

「ぼーっとしてる、かな?やっぱり疲れてるのかも」

そう返した千鶴に宗治は「わかった」と伝えて二人でタクシーに乗りこんだ。

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