ヒールの折れたシンデレラ
その返事をきいて園美はいつも笑顔を絶やさない顔をゆがめる。

「それは周囲の目を欺くためですよね?」

最後の望みをかけた園美の言葉も宗治の続く言葉で覆される。

「いや、彼女のこととても大事に思っているよ」

それを聞いた園美が絞り出すような声でこう告げる。

「彼女が常務をだましているとしてもですか?」

「だます?」

聞き捨てならない言葉に宗治は顔をゆがめて園美の言葉の真意を聞き出そうとする。

「私知ってるんです。彼女は会長と何かやり取りをしてりることを」

「会長?」

祖母がどうというのだ。

確かにこの人事は祖母の和子が決定した。

「瀬川さんは自分がどうして秘書課に来たのかわからないと言っていましたが、理由は会長から直接指示があったからです。何度か会長室に出入りしている瀬川さんを見ました」

いくら会長の指示で異動になったからって、特別なことがない限り簡単に会長室へは出入りしないはずだ。

「そしたら偶然聞いてしまたんです。重役フロアの会議室にある給湯室で片付けをしているときに、たまたま会議室で会長と会長付きの秘書が話をしている内容を」

宗治は言葉を挟まずに無言で話を聞いている。
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