ヒールの折れたシンデレラ
第五章

(1)離れる距離

あくる日、鏡の中の千鶴は考えられないほどひどい顔をしていた。

目元だけでもと急いでアイスノンで冷やしメイクでどうにか誤魔化す。

しかし誰から見ても“何かあった”ことが千鶴の顔を見れば一目瞭然だ。

「大丈夫ですか?」

席に着くなり園美が心配して声をかけてくる。

「ばかね、そういう時は見て見ぬふりをするものよ」

艶香があきれたように言う。

「無駄口たたいてないで、それぞれの仕事をしなさい」

いつもは千鶴に冷たい華子がその場の会話を終わらせてくれたことに千鶴は感謝した。

朝の打合せの時間になり、千鶴は常務室へといつものように足を踏み入れた。

そこはいつもの朝とかわらず、宗治、勇矢、千鶴の三人だ。

「おはようございます。本日の予定ですが……」

千鶴が話始めると宗治がそれをさえぎる。

「瀬川さん、今日からは元のように高浜にやってもらうから、君はデスクに戻っていて」

顔も見ずにそう告げらえる。

「ど……うしてですか?」

絞り出すような声で千鶴は問いかける。

「もともとそれは高浜の仕事だから、もとに戻すだけだよ」

書類をみつめ一度も千鶴を見ようともしない。
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