ヒールの折れたシンデレラ
「わかりました」

小さく答えて部屋を出るのが精いっぱいだった。

仕事でさえも一緒にいることを拒否されてしまった。仕事だけでも傍にいたいと思っていた。でもそれさえも叶わない。

デスクに戻ることなどできない。とまっていた涙が込み上げてくるのを感じる。泣くのを我慢して唇がぶるぶる震える。

トイレの個室に駆けこんで鍵をかけた瞬間にボロボロと涙がこぼれる。

(仕事中に会社で泣くなんて……)

なんとか冷静に客観的に自分を見ようとするが、無駄だった。

その場にかがみこんでしゃくりあげる。

こらえきれない嗚咽が扉の外まで漏れていた。
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