ヒールの折れたシンデレラ
「去年あなたが経理システムの構築で社長賞をもらったでしょう?社内報であなたを見て驚いたわ。お母様にそっくりだもの。そこで思い立ったの。あなたを宗治に近づけたらどうなるかって」

まるで“ちょっとしたいたずら”とでも言いたそうだが訳も分からないミッションを与えられて異動させられた千鶴の身にもなってほしい。

「そしてまんまとばぁさんの思う通りになったってこと」

宗治は眉を下げて「まいった」とでも言いたそうだ。

「念願かなって、ひ孫の顔がみられそうだわ」

嬉しそうに手をたたく和子に「おい、ばぁちゃん気が早い」なんて宗治が返している。

千鶴は……放心状態でその光景をみていた。

そして魔女と言われた目の前の女性がぽいっと投げた“幸せの罠”にドボンと入ってしまったことを改めて実感した。

「で、式はいつにするの?」

嬉しそうに和子が千鶴に尋ねる。

「あの、私……まだ」

「え?はぁ?宗治まだなの?」

ありえないとでも言いたそそうな表情を和子が浮かべる。

「いや、ちょっと……」

頭を掻きながら言葉を濁す。

会長の前だと宗治もかたなしだ。

「仕事であれほど結果結果言ってるくせにだらしないわね」

和子に叱責されて宗治はさらに頭をかく。
< 201 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop