ヒールの折れたシンデレラ

(3)シャンパンの正しい飲み方

八月も下旬になると夏休みの土産が社内に行き交うようになるが、ここ葉山の秘書課は年内でも一二を争う忙しさになる。

毎年この時期に取引先を一同に会して懇親会を開くのだ。

系列のホテルの一番大きな会場を貸し切ってのその会は、会社の戦略や方向性を決める経営企画室が中心となって行うが、ホステス役として秘書課の面々も駆り出される。

秘書の業務をこなしながら他部署との連携をとる仕事は大変だったが千鶴にとってやりがいのある仕事で毎日せわしなく動き回っていた。

やっと迎えた当日に千鶴はホテルから料理の確認をしてほしいといわれて、経営企画課の社員とともに最終確認をしていた。

(この前みたいな失敗は許されない)

そう思い最後の最後まで確認を怠らなかった。

そしてその作業を行っていたおかげでほかの秘書課のメンバーの様子に気が付かずにいた。

それに気づいたのは、ホテルのロビーに今日のお客様が集まり始めたころだった。

「園美ちゃんそれ……」

立派な振袖を着て、受付テーブルに現れた園美に千鶴は驚く。

しかし園美もまた千鶴を見て驚いていた。
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