ヒールの折れたシンデレラ
「あれから何か困っていることはない?」

真剣に聞かれて千鶴はドキリとした。

(急にどうしたんだろう)

「大丈夫ですよ。そもそも自分がうっかりしてただけですから」

心配させないように努めて明るく返す。

そもそも宗治が千鶴にちょっかいをかけなければ、こんなことにはならないのだ。

そんな風に思いながら千鶴はチャンスだと思い聞きたかったことを尋ねた。

「常務はどんな相手なら結婚しようと思うんですか?」

和子からはせかすようなことは、特に何も言われていないがこの調子だと一年などあっという間だ。

今は結婚の意思がないにしても、出会うべき人に出会えばそれも変わってくるかもしれない。

自分でも無理難題をふっかけられたと思うが、やらなくてはならない。

出来るだけの努力はしなくては……。

「そんなこと聞いてどうするの?」

先ほど千鶴を心配していた雰囲気とは打って変わって急に冷たい態度に一瞬たじろぐ。

「結婚しないって言ってましたけど、周りはそれを認めないんじゃないですか?」

答えられずに論点をずらして会話を続ける。

「周りね……。それこそどうでもいい。じゃあ結婚って一体何のためにするの?」

反対に質問されて千鶴は一瞬たじろぐ。
< 78 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop