ヒールの折れたシンデレラ
チャイムの音で目が覚める。

「……ピンポーン」

時計をみると朝の十時。一度も目覚めることなく熟睡した千鶴は呼び鈴の音で目を覚ましそばにあったカーディガンを羽織るとインターフォンに応答した。

「……はい」

「お届け物です」

確認するとバイク便のお兄さんがリボンのかかった包みをもって立っている。

印鑑を押して荷物を受け取り、きれいなロイヤルブルーのリボンをほどいた。

そこには靴が二足。

一つは昨日千鶴がダメにしたものとよく似たデザインの黒のパンプス。

もう一つは小さな可愛らしい花をあしらったツイード素材のパンプスだった。

箱の隅に添えられていたメッセージカードに目を通す。

【ヒールの折れたシンデレラ、新しい靴でデートしよう。十三時駅で待ってる 宗治】

気障な文章に思わず赤面する千鶴だったが、それと共に宗治が今日も千鶴に会いたいと思ってくれていることが嬉しかった。

(これじゃ断りようがないじゃない……)

急いでクローゼットを開いて、もらったパンプスに合う服を探した。

ライム色のストライプのワンピースはフレンチスリーブで腕がほっそり見えるしウエストには濃い緑色のリボンを結ぶデザインだ。

これに白のカーディガンを合わせてみる。

鏡に映る自分の顔がほころんでいる。出かける前のいつもの作業なのに宗治と会うとなると服ひとつ選ぶのも楽しい作業だった。

「やばいっ!もうこんな時間。シャワー浴びなきゃ」

宗治とのデートに思いをはせながらバタバタとバスルームへとかけていった。
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