ヒールの折れたシンデレラ
時間に間に合うようにマンションの外へ出ると見慣れない車が一台停まっていた。

そしてそれにもたれて立つのは、自分の上司兼思いが通じたばかりの宗治だった。

驚いて見つめる千鶴に宗治は軽く手をあげる。

急いで駆け寄った千鶴に「急ぐとまた転ぶぞ」と笑顔をくれた。

「駅って言ってたのに、どうしたんですか」

「早く会いたくて迎えに来たんだけど。ダメ?」

「あ、あのそういう恥ずかしいこと言うの禁止!」

「負けずに千鶴も言えばいい」

(今、千鶴って言った!)

さらっと名前を呼ばれたことに驚いていると、そのまま助手席に連れていかれて座らされた。

宗治が運転席に戻ると千鶴は急いでシートベルトを締めた。

「あのどこに行くんですか?」

宗治のラフな服装をみて、千鶴の今日の恰好でも問題なさそうだと安心したけれど行先がわからない。

「ん~ドライブ。特に何も決めてない」

そう言ってサングラスをかけた宗治の横顔はいつにもまして素敵に見えた。

二人を乗せたレクサスRXは高速道路を通って軽快に走っている。

カーステレオから流れてくる音楽を鼻歌で歌いながら運転する姿から宗治の気持ちがうかがいしれ千鶴も顔をほころばせた。

行先も知らずにいた千鶴だったが、そんな時間を過ごすのも悪くない。

宗治の表情をみて千鶴も心から今というときを楽しんだ。
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