ヒールの折れたシンデレラ
ハルが作っているというハーブティを入れてもらい、のんびりと話をする。

宗治がここに通ってもう四年たつという話から、通い始めた当初は宗治がくると近所のおばあさんたちが集まったとか、千鶴の知らない色んな宗治の話を聞かせてくれた。

二人で話をしている間、宗治は白い作業着と帽子をかぶって工房の中をうろうろして色々見ていた。

その勝手知ったる感じからどれだけここの商品に惚れ込んで通い詰めたのかということが伺い知れる。

そんな宗治を眺めているとハルが話はじめる。

「あの子ここには本当によく通ってくれてね。私が何度来ても無駄だって言ってるんだけど、遊びにきただけだって……」

「そうですか」

派手に見えるが、そういうことをするのが宗治だ。

千鶴は宗治を知ってから時間は長くないがそうするのが宗治らしいと思う。

「ただときどき妙に憂いを含んだ表情を会話の中に見せることがあってね。だけど今日は今まで来たなかでも一番楽しそうだ。誰かさんが一緒だからかね?」

そんな風に言われて、千鶴の顔が赤くなる。

すると背後から宗治の声が聞こえる。

「二人で何楽しそうに話してるの?」

「なんでもないから!」

恥ずかしくてハルに何か言われる前に千鶴が返事をする。

「娘がやってるジェラート屋にも寄って行ってやっておくれ」

そう言ってハルさんに見送られながら少し先にあるジェラート店まで宗治と歩く。
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