ノーチェ


だけど薫の言葉で
あたしの足は止まる。



「ちょうどよかった。俺荷物取って来るからそしたら乗せてくんねぇ?」

「…は?」



の、乗せる?


意味のわからない、といったあたしの様子に

「とりあえず、そこで待ってろ。」

と命令口調で門をくぐって庭の中へと足を踏み入れる。



「あ、言っておくけど。」と再び門から顔を覗かせた薫は

「居なかったら、あの事バラすから。」

そう言ってニヤリと笑った。


『……ふーん、じゃあ不倫か。』


昨日の薫の言葉が脳裏に浮かぶ。




「ちょっと、薫!」

彼女もそんな薫を追い掛けて花束を抱えたまま家の中へと入っていってしまった。




そしてポツンと残されたあたし。



「…意味、わからないんですけど…。」

そんな独り言が
虚しく宙を彷徨った。




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