Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「じゃ、ホテルに戻るんですか?」


 みのりが訳が分からないという調子で、質問する。


「いいや、ホテルは取ってないから。」


 意味を説明するような目つきで、石原はみのりを見つめる。石原の真意をようやく理解したみのりは、顔を赤くした。


 石原は、今晩みのりのアパートに泊まるつもりなのだ。こんなことは初めてなので、みのりは緊張で胸が激しく鼓動を打ち始めた。


 …….でも、そのために、芳野高校の元同僚にも、奥さんにも嘘をついてきたということだ……。

 今日だけではない、これまでにも石原は、自分といるためにいくつ嘘をついてきたのだろう。
 朝まで石原といられることは嬉しい反面、みのりに後ろめたい気持ちを掻きたてさせた。


「何か飲みます?…と言っても、うちにはアルコールはないんだけど。」


 後ろめたさを振り払うように、みのりが石原に笑顔を向ける。石原は同じように笑顔を返した。


「なんでも。」

「じゃ、紅茶を淹れますね。」


 一緒に働いていた時、石原はいつもコーヒーではなく紅茶を飲んでいたことを、みのりはちゃんと覚えていた。


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