Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
その日の夜、10時過ぎになってからみのりのアパートのドアのチャイムが鳴った。夜遅い訪問者にかかわらず、何の疑いもなくみのりはドアを開く。
すると、中に入ってきたのは石原だ。
ドアが閉まった瞬間に、みのりは石原に抱きすくめられる。
「ああ、久しぶり……。」
腕の中にみのりがいる感覚を実感して、石原がつぶやく。
そして、そのままキスをしようと思ったのか、石原が腕の力を緩めた時、みのりはするりと腕から抜け出した。
キスをしてしまうと、話をすることさえままならず、そのまま始まってしまうからだ。
居間へと場所を移して、石原に話しかける。
「もっと遅くなるかと思ってたけど、二次会には行かなかったんですか?」
拍子抜けのような顔をしていた石原は、テーブルに車のキーを置き、ソファに座って気を取り直した。
「二次会途中で抜けてきた。『家に帰る』って言ってたから、酒も飲んでなかったし。」
「そっか、飲めない飲み会はつまんないですよね。」
〝家に帰る〟という響きは、みのりの心に薄い影を落とした。その微妙な表情の機微に、石原は気づいたのか、
「だけど、家には『今日はこっちのホテルに宿をとる』って言って出てきた。」
と言って、ニッコリと笑った。