Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 みのりを江口に持っていかれて、しょうがなく遼太郎はバスに乗り込んだ。

 江口がバスに上がってきて座席に着くと、運転手をしている保護者の一人は、バスのエンジンをかけて出発する。

 遼太郎が窓からみのりを見下ろすと、みのりは遼太郎に気づいて手を振って微笑んだ。

 いつもならば、みのりに微笑みかけられると、背筋に震えが走るような喜びを感じられるのに、先ほどのみのりの態度が気になって、遼太郎には言いようのない不安が襲ってくる。

 遼太郎は微笑みを返せず、バスが角を曲がってみのりが見えなくなるまで、首をひねって窓越しにみのりを見つめ続けていた。



 帰りのバスの中で、遼太郎は翳り(かげり)のあるみのりの微笑みを反芻していた。

 いつも試合の帰りは、疲れが出て爆睡する。特に勝った場合は、それは心地よい眠りに落ちてゆくのだが、今日の遼太郎は、みのりの些細な変化が気になって、眠るどころではなかった。

 勝ち試合だったのに、どうしてあんな顔をし、あんな態度をとるのか解らない。

 みのりがいつも向けてくれる曇りのない澄んだ笑顔を、遼太郎は当然のことのように思っていた。
 大したことはないのに、気を悪くするようなみのりではないと知っているから、なおさら遼太郎は不安になる。いろいろ考えても、思い当たる節はなく、悶々と思考は深みへはまっていく。


< 320 / 743 >

この作品をシェア

pagetop