Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 その時、選手たちが、みのりの目の前を通り過ぎてゆく。
 こんな近くで試合を観たことがないので、間近にいる選手たちに、みのりは圧倒されて息を呑んだ。

 選手たちの中の遼太郎が、観客席の高い位置に視線を泳がせているのが分かる。多分、自分を探しているのではないかとみのりは思ったが、「ここよ!」と、遼太郎の母の隣で叫ぶわけにもいかず、まんじりと様子を見守っていた。


 やっと最前列にいるみのりを見つけることのできた遼太郎は、意外そうな顔をした後、安堵でその顔を緩ませる。
 だが、みのりの隣には自分の母親がいることに気が付くと、目を剥いて固まった。

 みのりは恥ずかしそうに少し笑っただけだったが、遼太郎の母は笑顔で我が子に手を振っていた。
 遼太郎は、そんな二人に対してどんな反応を見せたらいいのか分からず、肩をすくめ瞬きをし、目を逸らした。


 時間が迫り、みのりの知り合いのレフリー、塩尻先生の合図でキックオフとなった。

 グラウンドと同じ高さで試合を観ると、選手たちの息づかいがダイレクトに伝わってくる。
 味方が次々とパスをしながら走り、相手方がそれを阻もうと追いかける……。その勢いと速さにみのりは驚いた。


< 343 / 743 >

この作品をシェア

pagetop