Rhapsody in Love 〜約束の場所〜




「押せ~、押せ~……。」


 みのりが手を組んで呪文のように唱えると、それを聞き届けたように、ボールは青のジャージのスクラムの後方へ蹴り出された。

 先ほどボールを投げ入れたスクラムハーフが再びボールを手にすると、素早く後方にいる背番号10番の味方にパスした。


「あっ…!」


 遼太郎だ。

 ベッドキャップを着けている上、泥まみれなので、いつもとイメージが違う。


 遼太郎がボールを片手に走り出すと、次々とタックルの応酬を受ける。
 遼太郎は素早い動きでそれをかわしていたが、攻防に参加してきた相手のフォワードの激しいタックルを受けて、泥の地面に叩きつけられた。


「………っ!!」


 みのりは口を手で押さえ、声にならない叫びをあげた。

 しかし、倒される直前、遼太郎の後方から走り寄った13番の選手に素早いパスしたので、まだ攻撃は続いている。
 遼太郎は立ち上がって、指をさしながら味方に何か叫び、再び走り始めた。

 センターの選手も、タックルをくらい倒れそうになるのを持ちこたえたところで、そこでモールになった。そこに猛然と泥を跳ね上げながら走り寄って来たのが、見てすぐに彼だと判る二俣だ。



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