Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
両センターが交差をするのを見て、都留山側に「ランギー!」という声が聞こえる。
しかし、第2センターが自分と交差する直前、遼太郎は短いパスを出すように見せかけて、向こうにいる第1センターへと長いパスを出した。第1センターから、猛ダッシュでライン参加してきたフルバックに、それからスピードに乗って走り込んできたウイングへとパスが繋げられる。
単純なサインプレーだが、「ランギー」の裏をかく、遼太郎たちが「裏ランギー」と呼んでいるものだった。
隙を衝かれた上に、サインを見誤った都留山はディフェンスが足りなくなり、都留山のフォワード陣が懸命に追いかけてきたが、結局芳野のウイングの俊足にはかなわなかった。
わあ――――っ!
と、芳野の応援席から安堵のような歓声が上がる。
ようやく芳野高校は、都留山からトライを挙げることができたのだ。
みのりも澄子と手を取り合って、歓喜の声を上げた。
トライ後のコンバージョンのゴールキックを、フルバックの選手が難なく決めて、これで得点は7点になった。
歓喜と安堵感で、みのりは思わず涙ぐむ。
これで芳野のプレーにも弾みがついてくると、みのりは疑わなかった。
何よりも、少しは遼太郎の心の負担が軽くなったのではないかと、自らの緊張も少し緩くなった。