Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「……悲しかったり、悔しかったりする嫌な涙じゃないから、心配しないで。」
みのりは両頬に涙を伝わせながら、無理に笑顔を作った。
「…それでも、狩野くん自身が納得できないんだったら、いい男になれるチャンスはこれからいくらだってあるわよ。」
自分は泣きながらも一生懸命励ましてくれようとしているみのりを、遼太郎は見つめ続け、自分はこの人なしでは生きていけないと、改めて気づかされた。
「……ね?」
と、みのりが優しく首をかしげて遼太郎を見つめ返した時、思わず遼太郎は立ち上がった。
コンクリートの叩きにラグビースパイクのスタッドを、カチカチと鳴らしながら、みのりに歩み寄る。
使ってしまってはいたが、タオルを持つ手を伸ばし、みのりの頬をそっと撫でた。
埃と草と、ラグビーをする遼太郎の匂い。みのりは目を閉じて、その匂いを吸い込み、遼太郎の行為を受け入れた。
涙を拭いても、みのりの目の周りの涙の痕がさらに濃くなる。
「…ありがとう。私のハンカチ、さっき二俣くんに貸しちゃって…。」
みのりがそう言うと、遼太郎は二俣の人目を憚らない泣き様を思い出して、黙ったままほのかに笑った。