Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
――昨日のあのラグビー部の子……!
左の手首に大きな絆創膏が貼られているから、間違いない。
――今日まで週に4日、3週間も授業に来てるのに、覚えてなかったなんて……!
読み終えた男子生徒は、史料集から顔を上げた。我に返ったみのりは、再び座席表に目を走らせ、名前を確認した。
「ありがとう、狩野くん。」
にっこりと微笑みかけながら、みのりは心の中で呟いた。
――覚えてなくて、ごめんね。狩野遼太郎くん…。
授業が終わると、生徒たちは待ちかねていたように思い思いの場所へ散っていく。みのりもホッと一息つき授業道具をまとめ、職員室へと戻る。
その途中の廊下で、先ほど授業をしていたクラスの男子生徒3人と足取りが一緒になった。その3人の内の一人が先ほどの狩野遼太郎だった。
男の子たちの方もみのりが気にかかるのか、様子を伺うような素振り。みのりがチラリと横を見遣ると、昨日と同じように遼太郎と目が合った。すると、遼太郎が昨日と同じようにはにかんだ表情を見せてくれたので、みのりもやさしく微笑んだ。