Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 次の日の朝、みのりは7時過ぎには出勤していた。
 昨晩帰宅して、ささやかな食事をした後、お風呂に入って気を失うように眠ってしまって、結局授業の予習はできないまま。


――3限の1年生の日本史の予習は2限目の空き時間にするとしても、1限の3年生の日本史はやっとかなきゃ!


 職員朝礼が始まるまでに、あと1時間しか猶予はない。切羽詰まっているみのりの思考は、目まぐるしく動いていた。

 昨夜帰宅したのは7時過ぎで、また7時過ぎには学校に来ている。


――ということは、1日の半分働いてるんだ……。


と、その事実に気が付いて、みのりは軽く笑うように息をもらす。そして、気を取り直すように机に向かった。


 みのりは1年生のクラスの副担任をしているが、私立文系クラスの日本史のみ3年生の授業も担当している。このクラスは4単位の授業、つまり週に4回も授業がある。

 国立クラスに比べて勉強に対するモチベーションは少々落ちるが、今の時期の評価は推薦入試の内申点に反映されるので、この子たちにしてはまだ真面目な方だ。

 今日の授業の内容は、「自由民権運動」。
 授業も中盤になったころ、史料を読んでもらうために、みのりは座席表を見ながら指名した。顔を上げて立ち上がった男子生徒を見て、みのりの意識は「民撰議院設立の建白書」から離れてしまった。

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