Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
着ていたはずのセーターを探すと、ベッドの横にきちんと畳まれて置かれている。定かでない記憶を探して、遼太郎に脱がせてもらったことを何となく思い出す……。
途端に、みのりの顔に火が着いた。
この姿を、きっと遼太郎に見られたに違いない。遼太郎にしてみたら、見たくもないものを見せられたのかもしれないが……。
とりあえず、ソファーの上に置かれてあったダッフルコートを羽織って、窓辺へと急ぐ。
遼太郎は既に、アパートから200mほどのところにある橋を、小走りで渡っていた。夕日に照らされたオレンジ色の景色の中、遼太郎は対岸の川沿いの道を軽快に走ってゆく。
みのりはその愛しい人の背中が見えなくなるまで、窓辺にたたずみ目で追い続けた。
見えなくなった途端、もう遼太郎に会いたくてたまらなくなる。
羽織ったコートの襟を握って、切ない痛みに耐えるために力を込めた。その痛みを癒すために、無意識にみのりは遼太郎の息吹を思い出す。
優しく抱き寄せられた時の、あの腕の力強さ。鍛えられた硬い胸に頭を載せ、身を預けたときの安心感。
遼太郎はまだ18歳の高校生だけれども、彼はこれまで出会った誰よりも、それをみのりにもたらしてくれる。あんなふうに、愛しい人に守られて包まれること以上の幸福はあるだろうか。