Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 夢の中でのことなのに、愛撫の感覚が体に残っているような気がする。

 もちろん、 遼太郎と実際にその行為をしたわけではないので、この感覚はみのりの中に存在しているもの――すなわち石原との感覚だ。

 夢の中の遼太郎とのキスも愛撫も、体に残っている石原との行為の記憶を思い出しているに過ぎない。

 みのりはそのことに気が付いて、やるせなさに涙がにじんだ。

 でも、胸と腹部をこの手でたどり、手のひらに残る硬い筋肉の感触は、石原との記憶ではない。
 その時、みのりはかつて遼太郎の裸の胸にぶつかり、その胸に手を突いて立ち上がったことを思いだした。

 夢の中の遼太郎と触れ合った感覚は、まさしく彼との記憶…。そのわずかな記憶を、みのりは胸に手を当てて噛みしめた。


――でも、でも…!狩野くんは生徒なのに、たとえ夢の中でもこんなふうに思うなんて …!


 生徒に対してこんな妄想を抱くなんて、自分は教師失格だ。教師としての自分を慕ってくれている遼太郎に対して、 これでは顔向けできない。

 ある意味 、みのりは自分に失望していた。自己嫌悪が心の中に充満して、苦しくなってくる。



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