Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
大学に行って単位を取るためには、レポート提出は必須条件だと言ったら、生徒自身もまじめに取り組む気になったようだ。
ただ、大学と違うところは、このレポートの執筆は、手書きでというところ。たとえ文献をそのまま写すのでも、コピーとペーストだけでレポートを終わらせてしまうのを防ぐためだ。
そのため、生徒たちは原稿用紙に鉛筆で、一心不乱に書いている。なかでも遼太郎は、みのりから借りた分厚い専門書を見ては、懸命に下書き用紙に何かを書き留めている。
そんな遼太郎の様子を、みのりは窓辺から見守った。資料の収集に手間取ったため、他の生徒よりも少し進捗が遅れているようだ。
あの真剣な様子は、個別指導で日本史の問題を解いている時のものと同じだと、みのりはしみじみと見つめる。
そういえば、遼太郎は授業中もいつもまっすぐな目でみのりの方を見ていてくれていた。
このあまり勉強に熱心でない、やる気のないクラスで、みのりの方も投げやりになりそうになったとき、遼太郎のその態度に何度励まされたか分からない。
そして、遼太郎はこの教室の中でただ一人、みのりにとって特別な存在になった。
もう、こんなふうに教室でそっと遼太郎を見つめられるのも、あと数回だ。2月の最初の週が終わると、3年生は仮卒をして学校には来なくなる。