ヴァージン=ロード
さあ、舞台は整った。あとは私がこの子を魅せるだけ。
この写真の主役はジュエリー。私は引き立て役。
でも私が人目を惹かない限り、写真を見てもらえない。
私が綺麗じゃないと、見てもらえない。
挑むようにカメラのレンズを意識する。私の意図を、意思を、河島さんに汲み取ってもらえなければ意味がない。
カメラマンとも相性がある。カメラマンがどんなものを撮りたいか、モデルがどんなふうに撮ってもらいたいか、それがすぐに伝わる場合もあるし、伝わらない場合もある。
その点、河島さんとは相性がいい。
彼は、私を素敵に撮ってくれる。
何度も、シャッター音が響く。ライトの当たり具合が変わる。それが心地よくて、私は異様な達成感と恍惚感に浸る。
私はこの何とも言えない感覚が好きだ。
夢乃の悪戯でうっかりモデルになってしまった私だったけど、初めての撮影でこの感覚を知った私は、すっかりモデルの仕事の虜になった。
それまでの私は知らなかった。自分がこんなに熱い感情を秘めていたことも、退屈に感じていた倦怠感を晴らす方法がモデルの仕事をすることだったということも。
だから今でも、私は夢乃に感謝している。