まだ知らない愛。
向かいのソファに座った二人に改めて挨拶をする。
「初めまして、月野桜と申します」
「和樹さん、すっごく可愛いでしょう?」
和樹って言う名前なんだ…
腕を絡める麗さんが可愛く笑う。
「付き合ってどのくらいになる?」
「二ヶ月と少しです」
「桜さんと言ったね、申し訳ないが君の家庭事情などは調べさせてもらった」
「…」
まさかその話が出てくるとは思わず、動揺が隠せない私の手を「大丈夫だ」と言うように強く握る瞬さんの手。
「母親が、憎いかい?」
私の目を見て真っ直ぐに聞く。
私に生まれてきた罪を与えた母、毎度連れてきた男に抱かれた日々。
正直に言えば憎いのではなく、怖い。
でも…そんな母でも私に名前をくれた。
桜という名前を。
今こうして瞬さんと居られるのはあの過去があったからかもしれない…そう思うと憎くはない。
むしろ感謝をしている。
首を振る私に優しく微笑んで和樹さんは言う。
「君は立派な人間だ。どんなに憎くてもその名前だけは大切にするんだよ」
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