シェリー ~イケない恋だと、わかっていても~
「行ってきなよ」
「え……?」
「だから、スキー旅行したいんだろ?」
「そ、そうだけど……。今、ダメだって、」
「いつも彩月は頑張ってくれてるからな。たまには羽を伸ばさないとな?」
「……ありがとう」
「おぅ」


どう考えても、けいちゃんがおかしい。だって今の今までダメだって、あれだけ言っといて急に気が変わるなんて……。


浮気、できるから?あの有美子って人に会うの?それらを考えるだけで、涙が出そうになる。


やっぱり、けいちゃん……。わたしのことなんか、もうどうでもよくなっちゃったんだろうな……。


ツライけど悲しいけど苦しいけど、今はスキー旅行のことだけ頭をイッパイにしておこう。じゃないと、ずっと考えて眠れなくなっちゃうし……。


「けいちゃん、わたしもう寝るね?」
「あぁ、おやすみ」
「おやすみなさい……」


けいちゃんの顔を見ると、心臓がバクバク鳴り出すんだ。わたし以外の人とエッチしてるんだな、って思ったら呼吸も苦しくなる。


だから、なるべく見ていたくなくて、わたしは眠たいフリをして、けいちゃんにおやすみをした。


次の日の夕方、梨江子にメールをした。匠哉さんも、ともさんも会社に有給を出すことができたらしく、スキー旅行の計画は着々と進んでいった。


そして、スキー旅行当日がきた。普通ならすごく嬉しいはずなのに、わたしの心は優れない。


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