シェリー ~イケない恋だと、わかっていても~
「行ってらっしゃい」
「うん、行ってくるよ。あ、明日何時に帰ってくるんだ?」
「え?……まだ、わかんない」
「ふーん、そっか。わかったよ。じゃあ、行ってくるよ」
「……うん」


やっぱり、変な胸騒ぎがするのは、わたしの思い込みなのかな。けいちゃん、わたしがいない間にやっぱり会うの?有美子って人に…。


考えれば考えるほど、呼吸が苦しくなってく。だけどそれは、梨江子からの着信音で、かき消された。


「おはよう!」
「うん、おはよう」
「あれ?どうかした?なんか元気ないみたいだけど」
「うん、ちょっとね……。あ、もう用意してあるから、すぐ出るね!」
「え?あ、うん。わかった、待ってるよ」


慌てて電話を切り、出る準備をする。晩御飯は外で食べると言ってたから、けいちゃんのごはんは用意しなくてもいい。


上にコートを羽織って、周りをグルリと見渡し、いろいろ確認をしてから外に出た。


外に出ると、マンションの前に車が止まっていて近付くと、運転席の窓が下に下りた。


「おはよう、彩月ちゃん」
「おはようございます」
「空港までだけど、助手席どうぞ」
「えっ?あ、はいっ」


まさか、助手席だとは思わなかった。匠哉さんの車じゃないのは、わかってた。


けど、ともさんのとなりは匠哉さんだと思ってたよ……。わたしなんかが、助手席に乗ってもいいのかな……。


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