Polaris
タクシーが見えなくなると、ハナちゃんがあたしに話しかける。


「あの時、中島さんに何言ったんですか?」

「ハナちゃんが好きだって」

「それだけですか?」


ハナちゃんは納得できないのか、聞いてくる。


「自分のことを好きだって言われて、喜ばないお客さまはいないわ。それが自分より若い子なら」


この世界は嘘で成り立っているようなもの。


ここは正しいものが間違っていて、間違っているものが正しいようなあやふやな世界。


この世界は何が正しいかなんて、きっと誰にもわからない。


「ハナちゃん、ここでしか生きられないって言ったよね?」

「はい」

「なら、今回みたいなことこれっきりにして」

「すいません」

「どんなことがあっても、お客さまを怒らせてはいけない」


それがどんな嫌なことだったとしても、、、。


「でも、、、」

「おさわりが嫌なら、上手く交わせるようになりなさい」

「はい」


そして、あたし達はお店へと戻った。

< 42 / 345 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop