ウソつきより愛をこめて
「いいから…なにもしないで帰って」
言い返す気力も湧いてこない。
いきなり大きな声で叫んだせいか頭がガンガンしてくる。
「お前の事情わかってる奴、他にいないんだろ?さっさと病院行くぞ。車は俺が出してやるから」
昨日もう関わらないでと言ったはずなのに、橘マネージャーは全然私の訴えを聞こうとしない。
この調子で美月のことも言いくるめて、わざわざうちの合鍵まで手に入れてからここへ来たんだろう。
イケメンにとことん弱い彼女が簡単に絆されていく様を、私は容易く想像できた。
「意地張ってないで、早く準備しろ。母親が元気でなかったら、子供が可哀想だ」
橘マネージャーにそう言われて、私は寧々のいる辺りに視線を彷徨わせる。
私の心配をしてるわけじゃないと言われた気がして、なぜか胸の辺りにちくりと痛みが走った。
…この人になんか頼りたくない。
でも寧々に朝から食事すらろくに摂らせていない今の状況を考えれば、私の出す答えはひとつしかなかった。
「…ねぇ」
「なんだ」
「私のことよりも、先に寧々のこと、…お願い」