ウソつきより愛をこめて

そう言った瞬間強烈な眠気に襲われて、私はそのまま身をベッドの上に投げ出す。

薄れゆく意識の中、橘マネージャーの少し冷たい手が私のおでこに触れてくるのを感じた。

「…少し眠ってろ」

あれ、なんだっけ。

…確か昔も、こんなことがあった気がする。





橘マネージャーに初めて会ったのは、決まっていた自分の店舗に配属される前のOJTに参加した時だった。

仕事が出来て容姿も抜群だった彼は、たくさんの社員の中心で誰よりも目立っていたのをよく覚えている。

あの時の私は、今思い出しても恥ずかしいくらい仕事が出来なかったから。

同期の中でも、一番橘マネージャーに怒られていた。

「客注の商品は、入荷の連絡する前にちゃんと伝票を見て商品コード確認しろってあれほど教えたろ!」

バックヤードに、今日も彼の怒号が響き渡る。

確かに顔は整ってるけど、性格極悪じゃん…。

お客様の前とは態度が違いすぎる橘マネージャーを、私はずっと苦手に思っていた。

「…間違えたのは、出荷を担当した他店の方じゃないですか。私ばかり注意を受けるのは納得がいきません」

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