ウソつきより愛をこめて
美月はどうやら、橘マネージャーの思いがまだ私に残っていると思ってるらしい。
「絶対さぁ、東京から追いかけてきたんだよ、エリカのこと。じゃなきゃ、わざわざ隣の部屋借りたりしないって~」
「はぁ…そんなこと、あるわけないでしょ」
彼女の昼ドラ並の妄想話を聞き流しながら、私はパソコンで今月のシフト表の最終確認を行う。
橘マネージャーに散々小言を言われたから、今月はほぼ抜かりない出来だ。
「うわー…、ここぞとばかりにゆりちゃん入れたねー」
「うん。だって彼女珍しく十二月の希望休出さなかったから。いつも週二くらいしか入れないのに、大学が冬休みの間は週五でも構わないっていうんだもん」
彼女はバイトでは一番長く働いているし、ほぼ一通りの業務を指示すれば問題なくこなしてくれる。
噂好きで私語が多いところが、玉にキズだけれど。
「なんかさー休憩室で騒いでたよ。ヘルプの橘マネージャーめちゃくちゃかっこいい、って」
「…へぇ」
あの人はきっと、どこへ行ってもモテるだろう。
昔はそんな話を聞くたびいちいち不安になってたけど、今の私には全く関係ない話だ。
「そんなに余裕で大丈夫なの?絶対落とすって、あの子息巻いてたよ」
「…別に。橘マネージャーが誰と付き合おうが、私には関係ないから」