ウソつきより愛をこめて
「ありがとうございました」
ホタルノヒカリが流れる店内で、私は最後のお客様をとびきりの笑顔で見送る。
橘マネージャーが手配してくれたコートはやはり飛ぶように売れ、今しがた最後の一着まで売り切ってしまった。
この販売ペースなら、もう一度補充が来るかもしれない。
いざとなったら西日本の店舗に交渉して、在庫を分けてもらおう。
ほくほく顔で売り場を見渡すと、もうほとんど商品整理が終わっていた。
フリーだった橘マネージャーとゆりちゃんがふたりで頑張ってくれたのだろう。
「お疲れ。コートやったな。これで俺も、バイヤーに嫌味言われなくて済むぜ」
「追加分も、出来たら頼んで欲しいんだけど…」
「んなの、売り切れる前からとっくにやってるっつの。とりあえず明日の午後必着で、大阪の店舗から移動かけてもらってる」
「さすが」
キラキラと目を輝かせた私の頭を、橘マネージャーが優しく撫でてくる。
「お前の周りには優秀な奴がいっぱいいるんだからな。こうやって、遠慮せずどんどん人を頼ったらいいんだよ」
その時一瞬だけ、時が止まったように感じた。
私に向けられた笑顔が、付き合うきっかけとなったあの夜ものに、ひどく似ていたから。
「…はい…」
だめ。…昔のように惹かれてはいけない。
私は何度もそう自分の心に言い聞かせていた。
もう、同じ轍を2度と踏むことがないように。