ウソつきより愛をこめて
「…っ」
「ほらこの口半開きの寝顔なんて、完全に小さい頃のマリカじゃん!恐ろしいね~、遺伝子の力ってのは」
空気を読まずひとりで喋り続ける私を、マリカが目を丸くして見つめている。
彼女の頬を濡らし続けていた涙は、いつの間にか止まっていた。
「…相変わらず、口悪いね」
「私はもともと、マリカみたいに女の子らしい性格じゃないからね」
「…そだね」
「否定しろよ。薄情な妹め」
「ごめん、ね…」
やっと見せてくれたマリカの笑顔が、どこか痛々しく感じる。
「本当にごめん、エリカ」
「いいよ別に。こうして会いに来てくれたんだから」
「今日は、お願いがあって…ここに来たの」
「…なに?」
「寧々を…寧々を一ヶ月だけ、ここで預かってほしいの」
「……」
「私一人で、乗り越えなくちゃいけないことがあるんだ。…寧々は、連れて行けないから」