アヤカシたちのお妃候補は人間の女の子でした
でもこんなことを言ったら絶対に彰さんに笑われてしまうから、唇を噛んだ。
晴彰さんは、相変わらず無表情のまま炎を操作している。
彼はなんだか、一番マトモそう。
「何故そのような顔をしている」
と、彰さん。
どこから取り出したのか、金色の扇子を口元にあてている。
それがなにを意味するのか理解するのにそう時間はかからなかった。
「彰さん! なに笑ってるんですか!?」
叫ぶと、彼の細長い指が私の唇に触れた。
端正な顔も近付いてくる。
私の顔は一気に赤くなった。
「そなたが、可笑しな顔をしておるからな」
笑い混じりに話す彼に、少し苛立ちを覚えた。
だってひどいよ。いきなり笑うなんて。
なんでこの人はそんなに私をからかうんだろう。
「別に、好きでしてる訳じゃありません」
「では何故そのような顔をしておった」
やっと笑いが収まったのか、扇子を懐にしまっている。
私は面倒くさいと思いながらも先ほどまでの自分の野望を小声で語った。
言いようのない恥ずかしさになんとか耐え、話し終わって顔を上げると彼は扇子も使わずに高らかに笑っていた。
それどころか、目に涙を浮かべている。
余程面白いらしい。
「……だから嫌だったのに」
そんな私の呟きは彼の笑い声によってかき消されてしまっていた。