アヤカシたちのお妃候補は人間の女の子でした

アヤカシの世界

 




その後、私は彰さん更に友也にも笑われながら異世界へと向かった。

その異世界とやらに、数十分程度で着いてしまった。

紫色の空に真っ赤な月が出ていて、不気味だけど少し神秘的な雰囲気の場所。

晴彰さんの指示に従って、私は火が髪や服に燃え移らないように気をつけて炎から降りた。

しかし彼らは慣れているのか飛び降りたり普通に降りたりしている。

ちなみに前者が友也。後者が彰さん。

晴彰さんは炎を消して、ふわりと舞ってから降りた。

やっぱり、人間らしくない。アヤカシって感じはする。

少し町を歩くと、美形パラダイスが広がっていた。

女の人も、男の人も。みんな、かなりの美形。

しかも背が高くてすらっとしている人が多い。

私は一応身長が高いだけで、すらっとはしていないから羨ましい。


「何をそんなに見ている」


低い声が、すぐ後ろから聞こえて少し驚いた。

振り向くとキスしてしまいそうなくらいの距離に、彰さんはいる。

どうしてこの人はいつも私のことをこうやってからかうんだろうか。

そして、彼にからかわれたときに感じるこのドキドキは何?


「いやー、みんな綺麗だなって思って」


「当たり前だ。人間共とは違うのだからな」


人間共って、彰さんは人間のことを嫌いなんだろうか。

それとも、アヤカシたちに対してもそんな呼び方なのか。

それは私には分からない。

考えても無駄だから、考えるのをやめた。


「兄上、彼女は人間なのですよ。それに亜美様は」


「晴彰!! 黙れ!」


彰さんが、晴彰さんに扇子……いや、扇子の中に仕込まれていた短刀を向けた。

晴彰さんは、いつもの表情とは違い目が鋭い。

あの軽そうな友也でさえ、目を見開いて黙っている。

どのくらい経ったのかは分からないけれど、少し経ってから彰さんは短刀をしまった。


「以後、そのことに関して口にするな」


「……申し訳御座いません、兄上」


晴彰さんはなにか言いたそうな顔をしていたけれど、何も言わずに彰さんに謝った。

私は、一人意味が分からずに呆然としていた。

なんとなく私が関係していることは分かる。

でも、“私が”なんなのかはわからない。

私……なにかした?

思い返してみても、全然見当たらない。





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