アヤカシたちのお妃候補は人間の女の子でした
 



私は無意識のうちに彰さんの手を振り払って、後ずさりしていた。

アヤカシなんかに連れて行かれるなんて、良くない場所に決まっている。

しかも、異世界だなんて。

だいたい、変態な彰さんのことだから変なことされそうだし。


「亜美様。悪いようには致しません。兄上のご無礼、お許しください」


ああ。なんかこの人、晴彰さんだとなんだか落ち着く。

安心出来るような、優しい気持ちになれる気がする。

私は知らず知らずのうちに、彼の手に自分の手を添えていた。

それを見ていたのか、友也さんが声高らかに笑いだした。

一気に彰さんの眉間には皺が寄っていた。


「あれー彰。振られたな」


「……黙っていろ。そなた、死にたいのか」


低い、威圧感のある声が響く。

それでも懲りずにお腹を抱えて笑う友也さんに、更に眉間の皺が濃くなってゆく。

これは大丈夫なのか? なんだか二人の間に火花が見えるような気がするのは気のせいかな。

……完全に気のせいじゃない。だって、晴彰さんため息吐いてるし。

だいたい、なんか喧嘩が始まってるし。とはいっても、口喧嘩。


「成人前のくせに我が妻となる者に手を出し、しかも私をバカにするとは……。覚悟は、出来ているのであろうな? この空気読めない子供が」


「なんだとー!? だいたい亜美は俺のだし。しかも空気なんて読めるはずねえじゃん彰読めんの? 空気が」


なんだか聞いていれば幼稚な口喧嘩だ。

これは青年と少年の口喧嘩じゃないし。子供っぽいなあ。

アヤカシってもっと、賢そうなイメージ立ったけど。

みんなこうなのかな。……いや、晴彰さんは違う。

今思ったけれど、ちょっと前に晴彰さんが彰さんのことを『兄上』って言ってたよね。

つまり、彰さんの弟ってことかな。

それにしては性格が似てないような……。



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