ring ring ring
 背後から回された忠信さんの大きな手が、小箱を持つわたしの手に重なる。ふだん見せない大胆な忠信さんの行動に、わたしは抵抗する術を知らず、導かれるまま少しずつリボンをほどいていった。
 冷たい夜風が、頬を撫で、髪を揺らす。耳に忠信さんの息がかかると心臓がどきどきして、指を動かしながらも、わたしはこの人が好きなんだなあ、と実感した。
 ほどいたリボンを忠信さんの手に預け、
 「開けてみようよ」
 忠信さんの3回目の言葉に、わたしはためらいがちに小箱の蓋を開けた。
 「……これ……」
 箱の中には、紺色のアクセサリーケースが入っていた。
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