ring ring ring
 「忘れ物かしら」
 誰かがクリスマスプレゼントにもらって、うっかり落としてしまったのだろうか。そうだとしたら、きっと今頃大慌てで探しているか、落ち込んでいるか。どちらにしても、早めに店のスタッフに渡したほうがよさそうだ。
 「開けてみたら」
 「ダメよ、そんなの。開封済みならまだしも、包んであるじゃない。きっと大切なものなのよ」
 人様のものを無断で開封なんてもってのほか、とわたしが箱を手に店内に引き返そうとすると、
 「きゃっ!」
 忠信さんが突然、わたしを背後から抱き締めた。
 忠信さんは外でいちゃついたりすることを好まず、本人には言えないが、どちらかと言えば面白味に欠けるタイプだから、わたしは心底驚いて、その一方で、いかにも恋人同士のシチュエーションに胸が高鳴った。
 「どどどどどどうしたの、急に」
 動揺を隠せないわたしの耳元で、彼がくすりと笑った。
 「開けてみようよ」
 「だから、それは……」
 「いいから」
 忠信さんは、いつになく強引だった。
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