ring ring ring
 デートって、たしかにいつも言っていた。でもそれは、いわゆる恋人同士のデートではないわけで。
 「由紀やはるかちゃんと遊びに行くときも、ふつうにデートって言ってるけど」
 「それ、ふつうじゃないですよ」
 そうかな、イマドキふつうじゃない?と反論したい気持ちをぐっと抑え、わたしは、
 「とにかく人目が気になるし迷惑だから、移動しようよ」
 無理やり高林くんの腕を引っ張って、人ごみを縫うように突き進み、ショッピングモールの外へ出た。
 とんだ計画狂いだ。楽しいショッピングのあと、もしかしていい雰囲気になったら告白できるかもと思っていたのに、告白どころか、高林くんはもうその先を行っていたなんて。
 わたしたちは、建物を出て少し歩いたところにある広場に、海が見えるベンチがあるのを見つけ、そこに並んで座った。今日の海は、風があまりなく穏やかな顔をしている。思いのほか陽射しが強くて、こんなことなら日焼け止めを塗って来ればよかったと思った。
 「高林くん」
 さっきまでものすごく騒がしいところにいたからか、自分の声がやけに大きく聞こえた。
 「わたしと付き合ってください」
 もう自分でも、なにがなんだかわからない。
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