ring ring ring
 「だからおれは……」
 「わかってる、もう付き合ってるって思ってくれてたんだよね。でもわたしはそうじゃなかったから、きちんと言いたくて」
 思えば、自分から告白するのは何年振りだろう。忠信さんと付き合い始めたのも向こうから言ってくれたからだし、その前なんて、そもそも何年前なのかさえ思い出せない。
 「誤解させててごめんね。もっと早く言えばよかったね」
 「いえ、おれのほうこそ……」
 高林くんは照れ臭そうに頭をかいた。そしてポツリと、
 「おれ、こう見えてオクテだから、それこそ、さっき手を繋ごうとしたのだってほんといっぱいいっぱいで」
 と、またまたまたかわいいことを言いだした。
 「いつも強がってるけど、いざとなるとダメなんすよねー」
 わたしは、これまでの高林くんの元気なイメージと今の彼を比べて、思わず吹き出してしまった。
 「いろいろ相談に乗ってくれてるときはずいぶん積極的なことも言ってたのに?」
 わたしは左手を広げ、右手で薬指を指してみせた。
< 157 / 161 >

この作品をシェア

pagetop