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 そもそもマリッジブルーの女性を相手に、婚約指輪を外してしまえばいいなんてアドバイスをするくらいの人が、オクテだなんておかしな話だ。でも高林くんは、その話を裏付けるような悲しいエピソードを披露してくれた。
 「おれ、悩んでる人を見るとほっとけなくて、いろんなアイディアが浮かんで、発言も行動も大胆になるんですよ。でもそういうおれを好きになってくれた女の人は、たいてい、その後とのギャップにびっくりして去っていきます。去年も、相談に乗ってあげた女の子に告られて付き合い始めたんすけど、おれが全然手出さないから1か月でフラれました」
 高林くんが、困っている人を放っておけない性格だというのは、何度も励まされたり勇気をもらったわたしはよくわかっているつもりだ。それにしても、本当の高林くんを知った人が去っていくなんて。
 「……切ないね」
 「……はい」
 「わたしは、大丈夫だから」
 ちょっと恥ずかしかったけれど、高林くんはわたしの言葉に、うれしそうな笑顔を返してくれた。
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