ring ring ring
 なんだか平和だ。
 ゆるやかな海風に吹かれ、好きな人とベンチでのんびり語り合う時間が、とても幸せ。気持ちよさそうに海を眺めている高林くんも、きっと同じ気持ちでいてくれている。
 この人なんだな、と思った。
 どんなにオクテでも、わたしがリードしていけばいい。何でもおいしいおいしいって一緒に食べて、言いたいことを言い合って、たくさん笑って、年月を重ねていきたい。わたしが隣にいてほしいのは、この人なんだ。わたしの薬指を輝かせてくれるのは、この人だったんだ。
 「ねえ、高林くん」
 「はい」
 「高林くんって、下の名前、何ていうの」
 「一平です」
 「高林一平か。いい名前だね」
 高林くんは、
 「何すか急に。ていうか、今まで知らなかったんですね」
 と笑った。
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