ring ring ring
 「なんでもない。こんなときに悩み相談なんて、やめよう。ごめんね」
 わたしは笑ってごまかした。
 けれど、そんなわたしの考えなんて忠信さんにはお見通しなのか、彼がそっとわたしの肩を抱いてくれた。温かかった。
 「このツリー、間近で見ても電飾が均等で、きれいだね」
 「そうね」
 電飾が均等、なんて理屈っぽくて笑ってしまいそうだったけど、話題を変えようとしてくれた気遣いがうれしい。
 「やけに奥行きがある電飾だと思ったら、木の表面だけじゃなくて中にまで電球があるんだね。凝ってるよ、見てごらん」
 忠信さんがツリーを覗き込む。わたしも同じようにして首を伸ばした。たしかに細い枝の隙間を縫うように電球が配置され、ツリーの立体感を演出する役割を存分に果たしていた。しかしわたしは、一箇所、均等なはずの電球の間に、妙な距離があることに気付いた。
 「あれ、こんなところに……」
 見ると、枝と枝の間に、引っ掛かるようにして何かがある。手を伸ばして拾ってみると、それはかわいらしいリボンでラッピングされた、手の平サイズの小箱だった。
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