偽装結婚の行方
「えっ? 赤ちゃんの顔が似てるからって、それだけの理由であんたに頼んだわけ?」


真琴から、なぜ俺なのかと聞かれ、その理由を答えたら真琴に驚かれた。


「そうらしいよ」

「今まで口も利いた事がないのに?」

「ああ」

「ずいぶん図々しいわね」

「図々しいって、そんな言い方はないんじゃないか?」

「だって、そうでしょ? あ、待って。もしかすると……」

「何だよ?」

「ん……何でもない」


真琴は何か言いかけ、考える仕草をしたが、結局は何も言わなかった。

後になって思ったが、この時真琴は気付いていたのかもしれない。尚美の本当の気持ちに……


「今度、その家に行っていい?」

「え? なんで?」

「どんな女か、見てみたいから」

「おまえなあ……」

「何だったらこれから行こうかな」

「だ、ダメだよ。急に行ったりしたら、尚美に迷惑だ」

「ちっ。でも近い内に行くからね?」

「あ、ああ」


と言ったものの、真琴を俺達のアパートには連れて行けないなと思った。もし連れて行ったら、真琴は尚美に何を言うか、わかったもんじゃないから。

それにしても真琴の反応は意外だった。付き合いが長いだけに、もうちょっと俺の考えや行動を理解してくれると思ったんだけどなあ……

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