偽りの愛は深緑に染まる

* * *

「本当に俺が優しいならさ、」

 ああ、昼間の会話の続きか、と気づく。ベッドの中で、梨沙は一枚一枚服を脱がされていく。

「こんな自己中なことしないでしょ」

「自己中? それは違うと思うけど……私、たくさん貰ってるし」

 梨沙が言うと、彼はぷっと笑った。

「そうか。やっぱり梨沙で良かった」

 体温を感じながら、体をゆだねる。

 そこに愛はない。いや、愛がないと言っても決して嫌いではない。むしろかなり好きだ。

 でもせいぜい「情」のようなものだ。

 梨沙は金を、光流は都合のいい女を得られる。契約だけの関係にすぎない。

 週末だけ、恋人を演じる。それで生活が豊かになるのだから。
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