偽りの愛は深緑に染まる
右手には池があり、木々の間から柔らかい光が漏れている。とても穏やかな、春の一日だ。
梨沙も弁当に箸をつける。自分で作ったのだがやはりおいしい。上手くできて良かった。
「本当、梨沙を選んで良かったよ」
「あの、光流さん。今更なんだけど、誰かに告白されたりはしないの? しないはずないとおもうんだけど」
急成長企業の社長で、顔良しーーそれだけで女性が山ほど押し寄せてきそうなものなのに。
「うーん、何て言うかね」
鳩がバサバサっと羽音を立ててやってきた。
「可哀想じゃない? 俺忙しいから、彼女できても構ってあげられない」
「ああ、なるほど」
「向こうがこっちを好きでは駄目だったんだよ。だから、たまたま見かけた梨沙に声をかけてみたんだけど」
「そう、ですか……優しいですね」
「いや、ぜんぜん」