偽りの愛は深緑に染まる

 小さい頃から、自分の家がまわりより裕福でないのは知っていた。

 別にそれが耐えられないとか、そういうことは思ったことがない。安物に囲まれた生活で十分だと思っていた。

 それは就職してからも変わらなかった。住むところがあって、食べていければそれで良かった。図書館で本を読むなど、ただで楽しむ方法は山ほどある。

 去年まではそう思っていた。

 でも、梨沙は知ってしまったのだ。

 愛人という職業を。
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